2014/11/07
今回は気分を変えて心に効く漢方薬のお話をしたいと思います。
通常の漢方薬の解説とは少し違った選び方をしていますので、漢方を勉強されている方にとっては、本当か? と思われることもあるかもしれません。日常の診療で手応えのあるものを、その漢方薬の性格をキーワードで表現してわかりやすく紹介します。抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
最近認知症に効くということで、内科や精神科のドクターも処方される事が多い漢方薬です。僕の解釈は「伝えたい気持ちが伝わらないイライラ&とても我慢している状態」によく効くようです。認知症の患者さんの場合、この状態に当てはまりますが、認知症のご家族を介護されている方にもピッタリ合うことがあります。また、例えばご主人が話を聞いてくれない、言っても伝わらない、何か言うとキレてしまうので、言わずにグッと我慢しているような方。またお姑さんに言いたいことがあるが、言うと後で何倍にもなって返ってきそうなので言えない。などなど、意外と処方する頻度が高いお薬です。この薬が合う方は、ストレス度合いとしては、とても高いので、早くその状況から脱しないと気力が落ちて気分が落ちこんでしまう場合があるので、早めにストレスを減らす様に対処法を一緒に考えていきます。
桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
「悩みやすく考えすぎる・気になることがずっと頭に残っている」人に合う漢方薬です。「夢をよく見る。夜、何度も目が覚める」というのもキーワードになります。思考が止まらず、ずっと何かを考えている状態で、思考することそのものがストレスなのだということに気づく必要があります。起きている間に、思考し過ぎると夜の眠りが浅くなって、途中で目が覚めたり、夢をよく見るという状態になります。このタイプの方は結構多いので、当てはまる方は、試してみるとよいでしょう。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
「不安感・心配性・自信がない。最近身近な人やペットが亡くなった悲しみ」いずれかに当てはまる方に合う薬です。特徴的なのは、漢方の用語で「梅核気」という症状があります。のどに梅の種が詰まったような違和感の事を言います。この症状に半夏厚朴湯が効くことが多いです。逆に言うと、のどに詰まったような違和感がある人は、精神的に不安を感じていたり、心配症であったりします。他に、パニック障害、不安神経症などに使います。
女神散(にょしんさん)
「特定の人物に対して、すっごくイライラしている。頭のなかで文句を言っている。その人のことを考えるとストレスがたまる」など。通常は女性の月経不順、血の道症などでのぼせやめまいなどに使われる漢方薬ですが、時々このキーワードに合う方に処方して効果がでる事があります。たいていはご主人、姑、上司に対する強いストレスが原因のことが多いです。女神散が合う人に「誰かすっごく嫌いな人がいませんか?」と聞くと「なんでわかるんですか?」と驚かれます。